日本財団 図書館


 

ている。また、生命の組織の多くは膜構造をとっているが、この膜により、化学物質や電荷を化学エネルギーとして蓄えている、これが第2の特徴である。
(c) エネルギー変換
生体内では生命活動を維持するために極めて高効率でエネルギー変換が行われている。しかもそれらのエネルギー変換は常温常圧で行われている。このような高効率は達成できる理由として以下のようなことが明らかとなった。
例えば、プロトンエネルギーは、ATPとして蓄積され、この化学反応によって機械的エネルギー、光、音などあらゆる仕事に変換されている。したがって、発電や発光、あるいは筋肉の収縮の例に見られるように輸送およびエネルギー変換時に各種のエネルギー損失を大幅に低減させることが可能なエネルギーとなる。
また、生体内でみられる分子機械はミクロな機械で、それが取り扱うエネルギーも小さい。分子機械が入力、出力として扱うエネルギーは熱揺らぎと大差のない極めて小さなエネルギーである。これらを有効に活用するためのミクロな要素が異方的に働く協同現象などが見られる。
(d) システム化技術
生命システムは、自己組織化の法則を巧みに利用している。物質とエネルギーのフローが作り出す散逸構造には、遺伝情報あるいは環境変動などの外部情報を内部情報と連結する仕組が隠されていることが分かってきた。コンフォルモンと呼ばれるアミノ酸配列によって定まるタンパク質の立体配座が支配する酵素反応。自己触媒反応が高次のリサイクルシステムを生み出し、進化まで制御すると考えられているハイパーサイクル。生体高分子の集積を行う自己組み立ておよびオートマトン原理。化学反応と物質拡散が結合することによって時空間パターンを生じる反応−拡散ダイナミクス。化学振動する異なった要素間の信号伝達を可能とする確率共鳴および引き込み現象などが、これまで明らかにされてきたシステム化技術である。

 

(4) 新エネルギーコンセプト(L(Life)−エナジェティクス)
21世紀のエネルギー問題に対処するために、生命のエネルギー原理に学んだエネルギー革新の方向性について調査を行った。エネルギー技術の立場から生命のエネルギー利用を見直し、人類のエネルギー変換技術に役立つような新エネルギーコンセプトを「L(Life)−エナジェティクス」と呼び、その応用について考察した。その結果、L−エナジェティクスは、以下の新しいエネルギー技術の開発と応用に有望であると考えられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION